ストレスは味方である -ストレスの心理学①ー
みなさんは、ストレスや不安・緊張を感じた時、それにどう対処していますか?
多くの人は、ストレスや不安・緊張についてあまりいいイメージを持っていないと思います。
ストレスという単語をGoogleで調べると、「解消」「軽減」といった単語が並びます。たしかに、ストレスは抱えていてもいいことなんて何もないどころか、苦しいだけのように思えます。
しかし、科学的には「ストレスはエネルギーの源である」ということが分かっています。
僕がそのことを知ったのは、スタンフォード大学の心理学者ケリー・マクゴニガルの著書『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』からです。
この本を読んで、僕はストレスに対する考え方が大きく変わりました。
それまでは、僕もストレスが溜まることは「嫌だなあ」と思っていました。ですが、最近ではストレスを感じつつも、めげずにチャレンジしてみることが多くなりました。
嫌なストレスをなくすどころか、むしろ力に変えられたら、人生においてものすごいメリットになると思いませんか?
なぜ、ストレスはエネルギーの源になるのか。どうしてストレスは”悪”だと思われてきたのか、紹介していこうと思います。
目次
「思い込み」で、ストレスは力にも毒にもなる
ストレスと聞くと、何を連想しますか?溜まるもの、イライラ、解消するもの、健康に悪いもの…
そのイメージは、ある意味では合っています。しかし、ストレスには全く別、どころか、真逆の効果もあることが分かっています。
アメリカで行われたある実験で、驚くべき事実が分かりました。それは、
「ストレスをポジティブに考えるといい効果を生み、
ネガティブに考えると悪い効果を生む」
というものです。
この実験は、ホテルの客室員たちを対象に、二つのグループに分けて行われました。片方のグループには、「ベッドメイキングなどの業務は、立派な運動になる」と説明をし、もう片方には何もメリットを告げませんでした。
すると、自分たちの業務がよい運動であると知ったグループは、そうでない人たちに比べ、体重と体脂肪が減少し、血圧も下がっていました。さらに、「仕事が以前よりも好きになった」と答えた人の割合も上昇していました。*1
また、別の実験では、年を取ることにポジティブなイメージを持っている人は、ネガティブなイメージを持っている人に比べて、平均寿命が7.6年も長くなっていたという結果が得られました。*2
ものごとの本質は変わっていないのに、考え方を変えるだけで「ストレスを力に」できるということが分かったのです。言い換えれば、ストレスの効果は自分が思った通りになるということです。
ストレスのパラドックス
ある研究では、ストレスの少ない人々は人生を不幸に感じている割合が高いことが分かっています。
121カ国、12万5000人以上の15歳以上の人々に対して行われた「ギャラップ世論調査」では、ストレスを感じている人々の割合が多い国ほど、国の繁栄度、平均寿命、国民の幸福度や人生への満足度が高いことが分かりました。*3
スタンフォード大の心理学者マクゴニガルは、これを「ストレスのパラドクス」と呼んでいます。
これは、ストレスとその人の生きがいとが密接に関わりあっているために起こることです。
物事を追求すれば、必ず思い通りにいかないことも出てきますから、考えてみれば当たり前のことです。むしろ、ストレスを感じているということは、今まさに努力をしたり、一生懸命に物事を追及したりしていることの証なのです。
マクゴニガルは、ストレスは「人生に意味を見出そうと努力する」ための助けになると語っていますが、まさにその通りだと思います。
ストレスは成長するために避けては通れない
ここまで「ストレス」という言葉を広い意味で使ってきましたが、ちょっと「ストレス」の持つ意味について考えてみましょう。
ケリー・マクゴニガルは、ストレスを次のように捉えています。
「ストレスとは、自分にとって大切なものが脅かされたときに生じるものである」*4
この考えから、ストレスと人生の意義は切っても切り離せない関係にあるということがわかると思います。充実した人生を送るうえで、ストレスは避けては通れないものなのです。
ストレスを避けている人の多くは、隠れた成長のチャンスを逃してしまっていると思います。ストレスを解消した・避けたと思っていても、それは成長するために必要な困難から逃げたことと同じだからです。
ストレスを力に変えるためには、そのようなストレスへのネガティブなイメージを取り除くことが重要です。
逆に、人間はどうでもいいことからはストレスを感じないものです。今あなたがストレスを感じているならば、それは自分にとって大切なものを守ったり、手に入れたり、取り戻そうとしているからなのです。
まとめ
ここまで、
・ストレスの効果は考え方ひとつで変わる
・成長するためには、ストレスを避けず、乗り越えることが必要である
ことを説明してきました。
しかし、考え方ひとつでストレスの効果が変わってしまうというのは、どうも腑に落ちない人もいると思います。
それもそのはず。私たちは、ストレスの効果のうち、悪い効果にしか注目していないのです。
心理学的には、ストレスには3つの効果があることが分かっています。その効果について、次の記事で詳しく解説していきたいと思います。
*「ストレスの心理学」は、表題の通り、ケリー・マクゴニガル『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(『The Upside of Stress)』を参考に作成しました。書籍では、ストレスを力に変える思考法・練習法や、数多くの研究事例・エピソードが載せられています。興味のある方は、ぜひお買い求めください。
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